2005年の本

 天皇杯の準決勝でセレッソが負けちゃったのは残念だけど、今年読んだ本について。

  • 小説

 あんまり読めなかったし、そんなに当たりを読まなかった気もするんで紹介するのは3冊だけ。ヴォルマンの『ハッピー・ガールズ、バッド・ガールズ』なんかは素晴らしかったけど、もう絶版でブックオフでたまたま見つけたやつなんで、そういうのは除外。

トマス・M.ディッシュ『アジアの岸辺』
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 <未来の文学>シリーズの1冊。このシリーズは去年もジーン・ウルフの『ケルベロス第五の首』をあげたけど、本当にレベル高い。結局全部買いましたね。ディッシュのこの作品は短編集なんですけど、風刺と奇抜なアイディアが持ち味という作品が多く、ややブラックな感じがあります(ブラックという点で言えば、文学の未来を予言した?「本を読んだ男」は最高)。そんな中でも表題作の「アジアの岸辺」と「話にならない男」はそういった風刺とかアイディアと飛び越えた文句なしの傑作。「アジアの岸辺」は純文学的なものとしてもレベル高いです。


舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』
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 去年から舞城王太郎の小説はいくつか読んでいるんだけど、個人的にはこれが一番。さまざまなシチュエーションで、愛と死が描かれるこの小説は、あまりに愛と死が描かれるため、それがノスタルジーとして消化されずに、ある種の痛みを持って突き刺さる、そんな感じです。舞城王太郎は愛と死をインフレ気味に描くことで、『世界の中心で、愛をさけぶ』とかに答えて見せたんだと思う。


佐藤友哉『水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪』
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 東浩紀がほめていた頃から存在は知っていたんだけど、ようやく読んだ。「21世紀の『人間失格』」という感じで、現代の”ひきこもり的メンタリティ”ともいうべきものを余すことなく描けている。なんだかんだで佐藤友哉の小説はほぼ読んだけど、やっぱりこれが一番ですね。

  • 小説以外の本

北田 暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』
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 「2ちゃんねる論」、「ナショナリズム論」としては物足りないところもありますが、1980年代中盤以降の、「たけしの元気が出るテレビ」の分析とかはかなり面白いです。この本では「元気が出るテレビ」を「純粋テレビ」と分析しているけど、まさにそうだと思う。
 

池田 知加『「ニッポン人の悩み」 幸せはどこにある?』
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 もともと人生相談は大好きなんですけど、その人生相談の歴史を取り上げた本。取り上げている人生相談そのものの内容と、回答者の回答が何よりも面白いです。


滝川 一廣『新しい思春期像と精神療法』
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 特に新しい理論とかが打ち出されているわけではないんだけど、滝川一廣の派手さはなくても深みのある考えに納得させらます。


森 真一『日本はなぜ諍いの多い国になったのか - 「マナー神経症」の時代』
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 『自己コントロールの檻』が最高に面白かった森真一の著書。第7章の”キレる「お客様」”の章は面白いですね。
 

永井 均『倫理とは何か―猫のアインジヒトの挑戦』
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 今年は倫理の授業も担当したんだけど、けっこうこの本のお世話になった。永井均は「結局、私は、教科書シリーズにふさわしい本を書くことができなかった」と書いてますが、個人的にはこの本こそ、倫理学の優れた教科書だと思います。