ポスト小泉と佐藤卓己『メディア社会』

 個人的に政治家としてはまあまあ期待していた谷垣禎一自民党の総裁選に出馬表明したわけですが、公約見る限りこれはダメだね。

▽国民と国家の信頼の「絆」をつくることが政治家の最高の責任
▽年金などの社会保障を維持するには消費税率の5%引き上げが必要
▽アジアは成長センター。中韓を含め密接な関係を構築すべきだ
靖国神社参拝は控える。A級戦犯合祀はのどに刺さったトゲだ
▽人、モノ、カネ、情報が外国から日本に集まる社会にする

 って、具体性があるのは靖国に行かないってことと消費税が10%。消費税はいずれは上げなきゃいけないんだろうけど、今10%にしたらさすがに景気が腰折れして、また財政赤字がふくらむんじゃないか?
 あと、今まで財務省の役人よりって思われてただけに、どっかで官僚の既得権を打ち破るような公約がないと国民の道徳的な動員力を期待できないんじゃないかな?

 有力候補の安倍晋三に関しては、経済面を中川秀直あたりが仕切るのなら、まあそこはいいと思うんだけど(与謝野馨はカンベン!)、安倍晋三に関して不安なのは、佐藤卓己が『メディア社会』で述べている次のようなことなんですよね。

 紋切り型の危機予言は、誰でも容易に口にできる。社会が悪くなると予想する者は、つねに倫理的に「正しい」立場に立っており、悪いことが起こらなかった場合はでも、自分の警告が流れを変えたのだと強弁できる。つまり、危機予言は外れても歓迎こそすれ責任を問われない絶対安全な予言である。そうした責任のない立場から危機を予言する者が、その深刻な表情にもかかわらず真剣に志向しているとは限らない。
 小泉改革に一票を投じた国民がいま、心配すべきことは紋切り型の危機予言ではない。閉塞感を打破する糸口をテレビ仕立ての政治参加に求めた人々が、やがて陥るだろうニヒリズムである。(中略)
 とすれば、危険なのはポスト小泉政権が支持率の低下を過度に恐れることである。テレビ時代の政治家はいつまでも人気者でいたいと願うだろう。しかし、政治に幻滅はつきものであり、支持率の低下は必然である。幻滅を生まない政治こそが本当は危険なのである。(151〜152p)

 安倍晋三はほんとにテレビ時代の申し子という感じの政治家なんで、支持率を維持するために治安や外交で必要以上の強面を演じそうで、それが心配なんですよね。谷垣禎一なんて最初から幻滅を伴っているというか、過度な期待が非常に生まれにくい人なんで、その点は安心なんだけど、この公約じゃあ…。

 ちなみに佐藤卓己『メディア社会』は新聞の連載をまとめたものなんで本格的ではないですが、なかなか面白いメディア論の読み物です。

メディア社会―現代を読み解く視点
佐藤 卓己
4004310229


晩ご飯はジンギスカン風炒め物