笠原嘉『新・精神科医のノート』読了

 今日の東京競馬場は、皇太子に安倍総理織田裕二のそろい踏み。そろい踏みと言っても、皇太子まで出てきちゃうと、表彰式の織田裕二とかインパクトないですね。

 笠原嘉『新・精神科医のノート』を読了。
 『精神病』や『青年期』、『軽症うつ病』など、非常にわかりやすくそれでいて大事な点を押さえてある新書を書いてくれる笠原嘉ですが、この『新・精神科医のノート』もわかりやすいながら、所々に鋭すぎることはないけどきわめてまっとうで重要な指摘がしてあるいい本です。
 笠原嘉は、例えば中井久夫神田橋條治のように特別な才能を持った人という感じはしないのですが(あげた2人もその才能の表し方はぜんぜん違いますけどね)、いい意味で非常に常識があり、それでいて控えめながら自分の精神科医としての経験にきちんとした自信がある、という人なんだと思います。
 例えば、精神科医の志望者にたいする次の言葉なんかには、精神科医としての「職業的な倫理」のようなものが感じられますね。

 少なくとも、自分の精神的な障害を治すために精神科へこられるのは困る。あるいは、自分を精神的に成長させることを期待して、精神科医という職業を選ばれては困る。そもそも精神医学を損なふうに買い被ること自体が問題であろう。たしかに昔、神経症を知る者こそ人間を知る者だ、という意味のことをいった学者がいたが、今日も果たしてそうか。精神科医の日常は今日相当に忙しい。自分の問題を優先的に考える恵まれた時間はまずない。
 最近、心理学の分野で「心に傷を持った人の熱烈な心理療法家脂肪」(ウーンデット・ヒーラー)という言葉がいわれるそうだが、そういう人はもっと困る。精神的に病む人々を治療する仕事だから、精神的にできるだけ健康であってもらいたい。家族と一緒になって対策を考えるという場面も少なくない仕事だから、真に常識をそなえた人であってほしい。(106ー107p)

新・精神科医のノート
笠原 嘉
4622072785


晩ご飯はうなぎとキュウリ