ポール・ポースト『戦争の経済学』読了

 ポール・ポースト『戦争の経済学』を読了。ちょっと前にけっこう話題になった本なので簡単に。
 まず、訳者の山形浩生が解説でも書いているように、戦争を経済学的に分析した本であると同時に、戦争という題材を使って経済学の理論を解説した本でもある。
 北朝鮮のミサイル開発とパキスタンの核開発はそれぞれにとって比較優位にあり、互いにそれを貿易しあうことが利益になるなんて話は、場違いにも感じる用語の使い方だけど、でも、きっとそうなんでしょうね。
 そして、予想以上にひどい状況を明らかにしてくれているのが発展途上国の内戦の影響。
 その国の所得水準と内戦の発生確率には関係があり、一人当たりのGDPが250ドル以下なら、今後5年間で戦争が起きる確率は15%。内戦の発生理由は、「その国のGDPの相当部分が原材料の輸出に頼っている」という要因がもっとも強力で、よく言われる民族対立に関しては、民族が極めて多様だと内戦は起こりにくく、最大の民族集団が45〜90%を構成している時に起こりやすい。
 また、AK-47(カラシニコフ銃)の闇価格によって、その国の内戦危機がわかるというのも考えてみれば「なるほど」と納得させられる所、
 その他、軍需産業にとって必ずしも戦争は必要でないというデータ部引責なども、いわゆる一般常識を覆す知見だと思います。
 
 最後に特筆すべきはこの本の価格、これだけの分量で図表とかもあって1800円+税というのは安い!
 出版元はバジリコですが、がんばりましたね。


戦争の経済学
ポール・ポースト 山形浩生
4862380573



晩ご飯はナスとピーマンと牛肉の炒め物と冷奴