『台湾人生』

 今日は仕事がお休みだったので、ポレポレ東中野に『台湾人生』を見に行ってきました。
 『台湾人生』は、日本の植民地時代に日本の教育を受けた世代にインタビューしたドキュメンタリー。特に映像が素晴らしいとかそういうものはないんだけど、先日のNHKスペシャル「シリーズJAPANデビュー アジアの“一等国”」の騒ぎでモヤモヤした人なんかにはまさにオススメの映画。
 「日本を愛しているか?日本を憎んでいるか?」という二者択一ではない、台湾人たちの複雑な日本観、そして日本への愛憎の入り混じる熱い思いというのが伝わってきます。
 最後のほうで、宋さんという女性が「日本には懐かしさと悔しさとがあって。そしてこれは解けない数学なんですよ」というようなことを言っていましたけど、まさしくそうなのでしょう。


 伊藤潔『台湾』(中公新書)などを読めばわかるのですが、台湾の「親日」を支えている一つの要因が、日本が去ったあとに行われた国民党による台湾支配が日本にお植民地支配よりもひどかったということ。
 映画の中で、中国からきた人びとを「シナ人」と呼び、「軍隊でもなくごろつきの集まりだった」と言うシーンがありますが、一昨年に二・二八記念館を実際に見てきた身としてそれは納得できる証言です。
 2万8千人が犠牲になったと言われる二・二八事件とその後につづいた白色テロ。この映画の中で白色テロで弟を殺された蕭錦文さんは日本人相手に二・二八記念館や総統府のガイドをしていますが、蒋介石蒋経国の業績を紹介した総統府の部屋だけは案内できないと言います。
 そんな蕭錦文さんは、では「親日」かと言うとそんなに単純なものではありません。
 日本軍に志願し、日本兵としてビルマで戦った蕭錦文さんには、上官から「チャンコロ」と呼ばれた悔しさがあり、敗戦とともに日本に「棄てられた」という恨みがあります。「日本政府の感謝の言葉が欲しい」という蕭錦文さんの言葉を聞くと、NHKスペシャル「シリーズJAPANデビュー」がまったく触れなかった植民地支配の後始末にこそ問題があったような気がします。(NHKスペシャル「シリーズJAPANデビュー」は毎回そうなのですが、「日本の150年」と言っておきながら、戦後のことはほとんどやらない、「敗戦で日本はすべてを失って終わり」という皮相な視点がありそれが問題だと思います)


 これ以外にも、宋定國さんと日本人教師の交流の話は素直に感動できますし、人間ドラマとしても面白い映画だと思います。


 予告編
 



台湾―四百年の歴史と展望 (中公新書)
伊藤 潔
4121011449