『母なる証明』

 見逃したかと思ったけど、吉祥寺のバウスシアターで始まって、しかもバウスシアターは月曜は男1000円なんでさっそく見てきた。
 監督はポン・ジュノで「凄惨な女子高生殺人事件を皮切りに、事件の容疑者となった息子と、息子の無実を信じて真犯人を追う母の姿を追ったサスペンス」という紹介を聞くと、思い出すのは当然『殺人の追憶』なわけですが、途中まではやや軽いというかユーモアあふれる展開。
 ウォンビン演じる知恵おくれの青年トジュンとそれを溺愛するキム・ヘジャ演じる母親。
 冤罪が疑われる殺人事件という深刻な設定にも関わらず、とぼけた感じのウォンビンの演技とオーバーなキム・ヘジャの演技が笑いを誘います。
 

 ただ、この映画はオープニングのキム・ヘジャが草原で奇妙な踊りを踊っているシーンが強烈で、当然ながら観客はたんなるドタバタでは終らないとは予感しているわけです。
 で、結局、映画は予想通りに重い展開になっていくんだけど、それが想像以上!
 息子を溺愛する母親の中の隠された部分が明らかになると、物語は一気に狂気の様相を帯びてきます。
 このあたりはさすがポン・ジュノだと思いました。
 一つ一つのシーンも印象的ですし、キム・ヘジャの演技も凄いですし、かなりずっしり来る映画。
 個人的にはもう少し力を抜いてもいいシーンがあったほうがよいような気もしましたが、力のある映画であることは間違いないでしょう。