『ゾディアック』

 先週、クリストファー・ノーランの『プレステージ』、そして今週はデヴィッド・フィンチャーの『ゾディアック』と、期待の監督の作品が相次いで公開する豪華な6月(でも一番時間のある8月とかはたいした映画やらないんだよね、毎年)。こういうふうに映画が立て込んでいる時はとにかく暇がある時に見ちゃえ、ということで今日は立川に『ゾディアック』見に行ってきました。

 1968年から1974年のサンフランシスコで起きた連続殺人事件をもとにつくられたこの映画は、実際の事件をモデルにし、しかも結局犯人が捕まらなかったということもあって、フィンチャーならではの「オチ」のようなものはありません。また、柳下毅一郎がブログで「ヒッチコックなら85分で撮る」と書いてあるようにやや長すぎるような気がします。特に中盤のロバート・ダウニーJr演じるポール・エイヴリーの動きについてはもう少し削ったほうがいいかもしれません。
 けれども、それでもこれは面白い映画だし、デヴィッド・フィンチャーはハリウッドの中でもやっぱりトップレベルいの才能のある監督。
 最初の独立記念日の花火の上がる街の空撮から、地上に降りて来て車の移動にあわせて郊外の住宅を様子を撮って行くシーンとか、タクシーの運転手殺人事件の前のタクシーの空撮シーンとかは、フィンチャーならでは。カメラの動かし方は独特で、なおかつうまいです。
 ストーリー的には予告編で取り上げられている暗号解読とかは実はたいしたものではないのですし、映画でもそれほどきちんと取り上げられているわけでもないので肩すかしを食いますが、前半は連続殺人のシーンの緊迫感が、そして後半はゾディアックの謎に取り憑かれていくジェイク・ギレンホールの様子が緊迫感を出しています。
 大事な証人の行方を知らず、証言も埋もれさせたままという警察の捜査状況には歯がゆいものを感じますが、だからこそ、未解決事件だと知っていてもジェイク・ギレンホールが真相に迫れるのではないか?と思わせて引っ張る後半の演出はうまいと思います。変に社会現象として描かずにジェイク・ギレンホールと警察の動きに焦点を絞って正解でしょう。
 ラストに消化不良を覚える人もいるでしょうが、今年見た映画の中では映画として一番ですかね(『それでもボクはやってない』のリアリティも捨て難いけど)。


晩ご飯はナスとピーマンと豚肉の炒め物とトマト