「Seven Swans」とか「Greetings From Michigan」とか渋くて良いアルバムを作り、2005年の「Illinois」でブレークした感のあるSufjan Stevens。
「Illinois」は00年代のベストとかにも選ばれるであろうアルバムで、そのポップセンスと絢爛豪華なアレンジには目を見張るものがあったのですが、Sufjan Stevens自身は、このあと「Illinois」のアウトテイク集「Avalanche」をリリースしたあと活動がスローダウン。映像作品のDVDとサントラのCDの組み合わせである「BQE」のリリースこそあったものの、歌も入ったオリジナルアルバムとしては、この「The Age Of Adz」は久々のリリース。
で、どうかというと、「よい!」
だが、けっこう歪んでる。
メロディとしては「Illinois」に引き続くポップなものだし、ホーンなどを使った賑やかな展開もあるのですが、途中には頻繁に歪んだ電子音などが差し挟まれ、「Illinois」のような祝祭的な音楽とは言えない。
例えば2曲目の"Too Much"にしろ、3曲目の"Age Of Adz"にしろ、ポップなメロディながら全体的に電子音で歪まさられていてどことなく不穏な印象になっている。
ボーカルも時に歪ませたりしているんだけど、それ以上に感じるのは今までにはないエモーショナルな感じ。例えば、10曲目の"I Want To Be Well"のボーカルなんて今まで聞いたことなかったような気がします。
そして、なんといってもこのアルバムの肝はラストの"Impossible Soul"
なんと25分以上にわたる曲で、ほとんど交響曲といったスケール。前半はSufjanの歌を聴かせるような展開で、それがだんだんと歪んで、後半で一気にポップに爆発!Sufjan Stevensの今までの楽曲の中でも、個人的には"Come On! Feel The Illinoise!"に匹敵するレベル。
今までのやや歪んでいたアルバム世界がここだけ光に包まれている感じです。
ただ、このポップな部分が25分という長尺の曲に埋め込まれていて、単独の曲として輝いていないのはスコス勿体無い気もするし、その辺にSufjan Stevensのまだ吹っ切れていない部分があるのかな?って思う。
Sufjan Stevensの最近の様子とかは全然知らないのですが、このアルバムをきっかけにポップな世界に行くか、それとももっとダークな世界に行くか、次回作から目が離せないですね。
と言っても、今作も相当の出来であることには間違いなく、Sufjan Stevensの才能が遺憾なく発揮されているいいアルバムだと思います。
Age of Adz
Sufjan Stevens