『オデッセイ』

 評判になったSF小説『火星の人』の映画化で、監督はリドリー・スコット、主演はマッド・デイモン。
 マッド・デイモンは、『インターステラー』でも宇宙の星に一人取り残されていましたが、今回もそう。火星探査の際に、嵐に巻きもまれ仲間からは死んだと思われたが、実は生きていて火星でサバイバルするというもの。
 『インターステラー』では、絶望から「悪堕ち」してしまったマッド・デイモンですが、今作ではあくまでもポジティブに、科学の力を使って生き延びようとします。


 サバイバル映画ということでは、無人島に流れ着いた男が生還するまでを描いたトム・ハンクス主演の『キャスト・アウェイ』を思い出しましたが、『キャスト・アウェイ』が身一つでのサバイバルだったのに比べると、「科学を使ったサバイバル」というのがこの映画の特徴。
 植物学者でもある主人公は、火星に残された基地やローバーを利用しながら、自らジャガイモと乗組員の糞便からジャガイモ栽培に取り組み、途中からは地球のNASALとも交信を取りながら、帰還を目指します。また、主人公は毎日カメラに向かって自分のやっていることを録画して残していきます。
 このあたりのテクノロジーを利用できる環境だということが、『キャスト・アウェイ』とは違うところで、バレーボールに顔を書いて「ウィルソン」と名づけて友人にするしかなかったトム・ハンクスとは大きく違います。
 

 そのせいもあって意外に明るいというのがこの映画の特徴かもしれません。
 リドリー・スコットというとどちらかと言うと「暗め」の映画を撮ることが多いですが、この映画では冒頭のマッド・デイモンが自分に刺さったアンテナを抜くシーンの痛々しさがいかにもリドリー・スコットなのを除くと、全編に流れるディスコ調の音楽(船長が基地に残していった音楽の趣味)もあって、非常にポップです。
 地上の人間ドラマも、それほどシリアスにならない形でつくられており、マッド・デイモンという共通点はあっても『インターステラー』とはずいぶん違った印象を受けます。
 素直に楽しめる映画になっているんじゃないでしょうか。


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