「Fantôme」に続く、宇多田ヒカル7枚目のフルアルバム。
前作の「Fantôme」は、椎名林檎や小袋成彬、KOHHとのコラボレーションと、母親の藤圭子を亡くしたことからくる仏教的とも言っていいような歌詞が印象的なアルバムでした。
それを受けて、今作では歌詞がやや普通なものに回帰する一方で、コラボレーション路線が模索されるのかと思いましたけど、見事に違いましたね。
冒頭の"Play A Love Song"から♪僕の親がいつからああなのか/知らないけど/(大丈夫、大丈夫)/君と僕はこれからも成長するよ♪ですし、2曲目の"あなた"は♪終わりのない苦しみを甘受し/Darling 旅を続けよう/あなた以外帰る場所は/天上天下 どこにもない♪ですし、ラストの"嫉妬されるべき人生"は♪人の期待に応えるだけの/生き方はもうやめる/母の遺影に供える花を/替えながら思う♪です。
相変わらず母の死の影が濃厚というか、メインテーマといえるでしょう。
一方、コラボレーションは6曲目の"Too Proud"でラッパーのJevonが客演しているくらいです。
ただ、母の死というテーマを前面に出しながらもポップスとして成り立たせているのが宇多田ヒカルの手腕。
"Play A Love Song"はアルバムの冒頭を飾るにふさわしい勢いのある曲に仕上がっていますし、"初恋"は宇多田ヒカルの歌唱力が光るというか、本人ではないと歌えないような歌です。
また、"あなた"でも、5曲目の"Forevermore"(これもいい曲)でも、ぎりぎりのところで男女のラブソングともとれるような歌詞にもなっています。
あとアクセントとして効いているのが8曲目の"パクチーの唄"、ひたすら♪パクチーぱくぱく♪と歌うこの曲が、歌詞的にもアレンジ的にもアルバムに良い変化をつけていると思います。
とはいえ、やはり内向的なアルバムであることは確かで、次でさらに深まっていくのか、それとも外に向かって反転するのか、今後の宇多田ヒカルの活動が気になりますね。