『シン・ウルトラマン』

 いろいろと賛否両論あるみたいですが、個人的には面白かったです。

 なんといっても山本耕史メフィラス星人は最高ではないですか。ここ最近の実写のキャラの中ではピカイチと言ってもいいくらいで、「私の好きな言葉です」のセリフといい、このキャスティングといい、これだけで本作は成功したと言い切れるのではないかというレベル。

 主人公の神永=ウルトラマンを演じる斎藤工も宇宙人っぽさが出ていてよかったと思いますが、映画開始後すぐにウルトラマンと融合し、その後は宇宙人っぽく行動するために、歴代ウルトラマンの主人公的なヒーローっぽさはないですね。

 賛否のある長澤まさみの描き方ですが、これは完全にミサトさん的なキャラで、アニメでそれなりの尺をつかって造形したミサトさんという人物を、実写の2時間位でつくり上げようとしたところにやや無理が生じたのかな、とは思いました。個人的にはそんなに気になるレベルではありませんでしたが。

 

 実は初代のウルトラマンは全部ちゃんと見たことがなく(セブンや「帰ってきた」やエースやタロウ、レオは小学生時代に再放送で見てて、特に「帰ってきた」とエースは熱心に見たけど、初代は小学校時代に再放送していなかった)、どのくらいTVシリーズをなぞっているのかはわからないのですが、怪獣(本作では「禍威獣」)中心ではなく。宇宙人(外星人)中心に上手くストーリーをまとめていると思います。

 バルタン星人とかレッドキングとかゴモラとか、おなじみの面々は出ないのですが、やはりメフィラス星人が効いています。

 

 そして、あんまり書くとネタバレになりますが、少し劉慈欣『三体Ⅱ 黒暗森林』を思い出させるところがありますね。

 ウルトラマンに登場する宇宙人たちの多くがなぜ敵対的なのか? という問いに対して、『三体Ⅱ』の「暗黒森林理論」は1つの答えになりうるものです。

 

 『シン・ゴジラ』からの流れとしては、当然政治への言及も期待されるわけで、いまいちポジションははっきりしないものの政府の重要人物として竹野内豊が出てきたりもするのですが、『シン・ゴジラ』における虚構は基本的にゴジラだけだったのに対して、今作では禍威獣、外星人、ウルトラマンといった形で虚構が多いですし、科特隊(本作では禍特対)も巨災対よりも虚構性の強い組織なので、『シン・ゴジラ』ほどの政治ドラマ的な面白さはないですね。

 また、ラストに関してもヤシオリ作戦ほどのビジュアル的なインパクトは用意できなかったので、そこは弱いかなと思います。

 

 でも、『シン・ゴジラ』における長谷川博己石原さとみの関係性よりは、今作の斎藤工長澤まさみの関係性のほうがきちんとしているので、人間ドラマとしての良さはあると思います。

 あと、禍特対の室長を演じた田中哲司、担当大臣を演じた岩松了もいいですね。班長西島秀俊も含めて、このあたりの上司たちの人間っぽさもまた、山本耕史斎藤工の宇宙人っぽさを引き立てていてよかったと思います。