滝川一廣『「こころ」はどこで壊れるか』読了

 洋泉社新書yの滝川一廣『「こころ」はどこで壊れるか』を読み終わる。この本は精神科医滝川一廣佐藤幹夫が聞き手となり、昨今の心をめぐるさまざまな問題について聞いた本。佐藤幹夫がテレビでコメントする精神科医の批判やDSMについての批判を引っ張りすぎている面はあるのですが、やっぱり滝川一廣はなかなかの精神科医滝川一廣の信頼できる感じってのは、例えば佐藤幹夫に不眠に苦しむ患者を診る時の手順を聞かれた時の次の受け答えにあります。

滝川 でもね、あんまり人の「こころ」の問題には身を乗り出さないほうがいいと思うんですよ。
〜 と言いますと?
滝川 だってやっぱり大変じゃにですか。
〜 「こころ」に入る前に、問題のほうを解決できるなら、したほうがいいと。
滝川 そうです、そうです。眠れるようになって、それでしのぎがつけば、それでよいでしょう。そのために、どうしたら安眠できそうか、薬についてどう考えるか、そういうことをていねいに話し合ったり説明したりする配慮が、広い意味での精神療法(心理療法)でしょうね。

 このあたりの発現は笠原嘉が『軽症うつ病』(講談社現代新書)で書いている次の発言

 「心の治療はできることなら『あまり深くメスを入れないですませる』のが名医(?)だと私自身は思っています。」

に通じるものがありますね。
 この発言以外にも、少年犯罪が昔に比べて減っている点などもきちんと押さえてありますし、「人並み」になることが目標となりにくい現代社会の”生きづらさ”など、現代の「こころ」を取り巻く状況をきちんと見ている本だと思います。佐藤幹夫の発言は時々引っかかるんですけどね。
 滝川一廣『「こころ」はどこで壊れるか』


晩ご飯はコロッケとトマト