佐藤友哉『子どもたち怒る怒る怒る』を読了。佐藤友哉の新作にして出版元は新潮社。初出掲載誌も「新潮」と、佐藤友哉もいよいよ純文学進出か?という作品。ただ、内容は相変わらず佐藤友哉色の強いもの。
中編「子どもたち怒る怒る怒る」とその他5編の短編から構成されているんだけど、「子どもたち怒る怒る怒る」は『水没ピアノ』を思い起こさせるような作品。被害者意識とその逆転。卑屈な感情と万能感に満ちあふれたその世界はやはり独特の力があります。以下の部分なんかは、まさに佐藤友哉。
ぼくは無実だ。そのはずだ。
だけどもし、気づかないうちに悪いことをしていたのなら、それは謝ります。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
何だか知らないけどごめんなさい。
記憶にないけどごめんなさい。
とにかくごめんなさい。
本当にごめんなさい。
許してください。
どうか許して。
許してくれないなら・・・ぼくは戦います。
戦って勝利します。
もう我慢の限界です。
ぼくは怒っているんです。
戦って戦って戦って、殺しますよ?ひねり潰しますよ?剥ぎ取りますよ?倒し壊しますよ?殴り飛ばしますよ?
ぼくはあなたに、勝つ自信があります。
さあ、かかってこい!
短編のほうは、「大洪水の小さな家」と「生まれてきてくれてありがとう!」については描写力の弱さからうまく行っていない気がするけど、「死体と、」は阿部和重的なドタバタ劇でありながら、笑いが全くないというのが変に不気味。ある意味、生真面目過ぎな部分がすごい。
子供たち怒る怒る怒る
佐藤 友哉
晩ご飯は麻婆豆腐とトマト