自民の憲法草案について

 今日の新聞に自民の新憲法草案が載ってた。9条をはじめとして、前文とか国民の責務とかに関してはかなり常識的な点に落ち着いたと思うけど、気になるのは所々に見られるムードだけで決めたような意味不明な規定。その最たるものが第25条の3「犯罪被害者の権利」。
 「犯罪被害者は、その尊厳にふさわしい処遇を受ける権利を有する。」というものなんだけど、「その尊厳にふさわしい処遇」とはいったい何?犯罪の被害を国が補償してくれたりするのか?もしそうなら、モラルハザードが起こりそうだし、どういった犯罪被害者を対象にするのかや財源なども大きな問題。補償は視野に入れてなく、たんなる捜査や裁判の情報提供とかなら法改正で何とかなるし、生存権を規定する25条の直後にくるのは疑問。もちろん、犯罪被害者に対する国の何らかの支援はあってもよいけど、憲法で規定するようなことではないと思う。
 同じことが言えるのが25条の2の「環境権」。「国は、国民が良好な環境の恵沢を享受することができるようにその保全に努めなければならない。」とあるけど、「環境」の「保全」とはいったいどういうことなのか?というのが謎。「保全」ということは、今ある環境を守るというのが基本になるのか?それとも、かっての自然を取り戻すようなことも「保全」になるのか?「街並み」のようなものも「環境」になるのか?この規定も漠然としすぎていて、単なるムードで入れたものとしか思えない。
 憲法改正については、こうした一括した形ではなく、まず96条の改正手続を「各議院の三分の二以上の賛成」から「各議院の過半数以上の賛成」に改正し(ここは自民の草案とほぼ同じ)、その後に部分ごとに改正していくべき。一括改正だと、あまりに9条に議論が集中してしまって、上記のような疑問がスルーされてしまう危険があると思う。

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