カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』読了

 今日はバーゲンへ。今回は、今履いてる靴がボロボロっていうことで靴を買う。自分の靴のサイズはだいたい26なんだけど、26履いたらけっこう大きめ。でも25.5は売り切れ。それで、ためしに25を履いてみたら、けっこうピッタリ入っちゃうじゃん。
 いつの間に足小さくなったんだ…?

 カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を読了。いやぁ、これは傑作と言っていい小説。前作の『わたしたちが孤児だったころ』もリアリズムの中に、なにか現実離れした秘密を抱えたような小説でしたが、今作の『わたしを離さないで』では、リアリズム的な描写、そしてその背景に隠されたグロテスクな秘密ともどもさらに磨きがかかって、他の小説家では描けない境地に達しています。
 いつも、ネタばれを気にせずに感想を書くほうですが、この小説に限っては秘密を知らないほうがより楽しめると思うので、ある程度ぼかして書きますが、まず、この小説は、介護人をつとめる主人公のキャシーという女性の子ども時代から少女時代のヘールシャムという孤児院(?)での想い出が語られる小説です。そして、この想い出の語り口というのが非常にうまいです。
 子ども時代の女子の間での微妙な友だち関係の揺れ動き、親友のルースと密かに想いを寄せるトミーとの三角関係といったものが、ものすごく巧みに語られます。
 そうした語りの中で垣間見えるのがヘールシャムという施設の奇妙さ。最初は「ひょっとして精神病院なのか?」などと思って読みはじめましたが、その秘密というのはSF的と言っても良いような秘密です。
 このとんでもない秘密を端正な文体に織り込みながら読者を引っ張る力は見事の一言。英語で小説を書く日本人問うことで話題が先行していたカズオ・イシグロですが、まちがいなく現代の小説家の中でトップクラスの力量がある人ですね。

わたしを離さないで
カズオ イシグロ
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