http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20081018/p1で紹介した『シャルビューク夫人の肖像』がとっても面白かったので、再びジェフリー・フォードを。
今回読んだ『ガラスのなかの少女』は、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞作。
1930年代の大恐慌下のアメリカロングアイランドで、金持ち相手の降霊会を行う詐欺師シェル、その弟子でシェルに拾われたメキシコからの不法移民の少年ディエゴ、そしてシェルのボディガードも勤めるアントニーの3人が、降霊会の最中にガラスのなかの写った少女の秘密を探っていくというストーリー。
天才的な詐欺師のシェルのテクニックと、1930年代の恐慌、禁酒法、KKKといったものに彩られるアメリカの姿、そしてガラスのなかの少女の秘密と前半は非常に読ませます。
本物を思わせる霊媒師のリディアの登場、そして優生学の影が現われる中盤まではミステリーといても非常にいい出来で読者をぐいぐい引っ張ります。
ただ、後半の展開に関しては、「ミステリー」を期待する人には少し不満かもしれません。
後半では、謎の解決はやや湧きに追いやられ、シェルの知り合いである犬男やナイフ投げ師といった奇妙な人物たちが活躍する一大活劇とそんな中でのディエゴの成長が物語の中心となります。これはこれで面白いのですが、前半のサイコサスペンス的な感じからすると、ややドタバタした感じは否めません。
もっとも、それでも全体とすれば十分に面白いです。
この小説、読んだあとずっと「何かに似ている」と考えていましたが、ポール・オースターの『ミスター・ヴァーティゴ』に似てますね。
時代背景や主人公と師匠の設定、そして予想以上に長いスパンで物語が語られる面なども似ています。
ポール・オースター好きにもおススメできるかもしれません。