Mr.Children/REFLECTION

 前作の「[(an imitation) blood orange]」が全く冴えなかったミスチルのニューアルバムですけど、これはよい!
 [(an imitation) blood orange]のダメな点は、以下の2つの点。
 1、東日本大震災を受けて、それなりに感動的な歌をつくろうとしているんだろうけど、薄味な曲ばかり。
 2、音的に今までのミスチルをなぞっているだけで新鮮味なし


 まずは第1の点。
 スピッツ東日本大震災を受けて、それへの鎮魂や癒やしを含んだ「小さな生き物」という傑作をつくったわけですけど、やはりミスチル桜井和寿)にはそういうことはできないし、柄じゃない。
 自分の力ではどうしようもない不条理があったときに、自分の足場を守るためにひたすら自分を屈折させ続けるのが桜井和寿の歌詞なのであって、それがこの「REFLECTION」では復活している。
 今回のアルバムの収録曲の中では、"fantasy"が一番好きなのですが、サビの歌詞がいかにもミスチル節。

「僕らは愛し合い 幸せを分かち合い
歪で大きな隔たりも越えて行ける」
たとえばそんな願いを 誓いを 皮肉を
道連れに さぁ旅立とう


 次の第2の点。
 今回のアルバムの収録曲のうち、小林武史のプロデュースは5曲だけ。セルフプロデュースの曲がメインになっています。
 以前から小林武史のプロデュースがややマンネリなんじゃないかと思っていましたが、今回のアルバムを聞くとその考えは正しかった。小林武史プロデュース曲の、いつもどおりの音に比べると、セルフプロデュースの曲はよりゴツゴツとしたバンドサウンドになっていて新鮮。
 特に、最近の曲ではキーボードとストリングスにかき消されていた田原さんのギターが目立っている所がいいですね。今まで抑圧され続けてきた田原さんのギターが、"未完"でも"fantasy"でも"WALTZ"でも、久々に派手に鳴り響いていると思います。


 ミスチルは「DISCOVERY」や「Q」あたりでバンド・サウンドを志向しつつも、セールス的にイマイチだったためにポップス路線に軌道修正していきましたが、この「REFLECTION」では、「DISCOVERY」や「Q」にあったバンド・サウンドが再び目指されている感じです。
 特に"足音 〜Be Strong"、"Starting Over"といった曲が、「DISCOVERY」所収の"終わりなき旅”に近い印象を受けるせいもあって、アルバムとしては「DISCOVERY」を思い起こさせます。
 「DISCOVERY」や「Q」が一般的なファンにどこまで受けているのかは知りませんけど、個人的にはけっこう好きです。というわけで、このセルフプロデュース路線は非常に良いと思います。
 あと、付け加えるならば"忘れ得ぬ人"のメロディーの良さといったところでしょうか。
 ちなみに聞いたのはDripのほうでNakedのほうはさすがに買ってません。



REFLECTION{Drip}初回盤
Mr.Children
B00UKPQR02