2020年の紅白歌合戦を振り返る

 あけましておめでとうございます。

 新年最初の更新は例年通り、紅白歌合戦の振り返りからですが、今回の最大の注目ポイントは「紅組の勝利」。

 もちろん、第2部を見れば紅組のほうが穴のない布陣で純粋な歌唱の点から言うと紅組の勝利で何の不思議もないのですけど、それでも白が勝つのが近年の紅白。

 これはジャニーズ・ファンが内容に関係なく大挙して白に入れるから起こる現象だと考えられ、そのため自分は「お茶の間審査員の廃止」を提言してきたわけですが、今回は拡大されたお茶の間審査員のみの投票で紅組が圧勝しました。

 この謎を解く仮説としてとりあえず思い浮かぶのが、「嵐ファンが中継のときこそ紅白を見たけど、基本的にはラストライブの中継を見ていて紅白には帰ってこなかった」というものですが、もう1つ別の仮説も思い浮かびます。

 それは、今までの登録されたお茶の間審査員とは違い、誰でも参加できるシステムを導入したことで「組織票」的なものが無効になったというものです。

 これは民本主義を唱えて大正デモクラシーの風潮に思想的な基盤を与えた吉野作造の普選論に通じるものです。吉野は政友会が利権などで築いた地盤を破壊するために普通選挙を導入するべきだと主張しました。普選の導入によって有権者が激増すれば組織化や利益誘導が無効になり、健全な競争が取り戻せると考えたのです。

 今回の紅白においては普通選挙の導入に匹敵する、簡易的なお茶の間審査権の拡大によって、ジャニーズというマシーンの支配が打破された紅白として歴史に記録されるのかもしれません。

 

 あと、特筆すべきは二階堂ふみのそつのなさ。「和久田アナか?」って思わせるほどウッチャン大泉洋のアドリブをあっさりと引き取っていましたし、ディズニーコーナーで聴かせてくれた歌もうまい。あまりに隙がなくて、吉高由里子綾瀬はるかが懐かしくなるほど。

 

 では、ここからは各歌手の短評を

 

milet → 日本語の歌詞を洋楽のイントネーションに乗せる歌い方はLOVE PSYCHEDELICOを思い起こさせますね。けっこう良かったと思います。

櫻坂46 → 路線を変更するために改名したのかと思ってましたけど、欅坂と同じような路線なんですね。だと平手友梨奈を求めてしまうような…

水森かおり → 衣装はきれいだったけど特にびっくりするものではなく、フワちゃんの絡みのなんだか空振りだったような…

純烈 → リーダーのハート入りヘアスタイルで水森かおりの衣装を上回り、最後は罰ゲーム的な紙吹雪。ゴールデンボンバーの後継者か!

坂本冬美 → 上手くいえないけど、桑田佳祐がつくった歌は「フェイク」なんだけど、坂本冬美は「マジ」に歌っているので、そこに乗り切れない何かがある感じですかね。

NiziU → メンバーのテイストが似すぎていて識別不能な坂道シリーズよりも、女の子にはこっちはウケますよね。楽曲もJ-POPとは緩急の付け方が違って飽きさせない。

瑛人 → 一発屋かもしれないけれど、このサビのメロディの中毒性というものは確かにある。

BABYMETAL → 合いの手で入る声の脱力的なところはいまいちだけど、ボーカルの人の声はいい。どこかで演歌のカヴァーをしてほしいくらい。

JUJU → 歌が上手いのは知ってたけど、今回はリミットを振り切って歌っていた感じでしたね。これも良かった。

GReeeeN → 「AI・美空ひばり」の技術を応用して、いつでもボタン1つであなたにカスタマイズした人生の応援歌を歌ってくれる「AI・GReeeeN」とかが開発されそうですね。

嵐 → これだけ大きくなったグループが誰ひとり欠けることなく、メンバー間のあからさまな格差みたいなものも感じさせることなく、とりあえずは終えられたというのは、やはりすごいことですよね。

LiSA → 「炎」は楽曲のみだと少し弱い気もするのですが、背景で煉獄さんが映れば「煉獄さ〜ん」(泣)。

Official髭男dism → 昨年の歌は近年のバンドのいいとこ取りみたいに感じましたが、今年の歌は80年代後半から90年代前半のトレンディドラマ全盛時にハマりそうな歌。暗いヒット曲の多い今年の中では異色かも。

三山ひろし → もはや誰も歌を聴いていないのではないかと思われるのですが、前回の失敗が盛り上がりを生む麻薬的コンテンツになりつつある。

YOASOBI → 歌詞だけ聴けばかなり重たい感じですが、それに限界まで速度をつけることで軽快に仕上げている感じでしょうか。で、歌い手がそれを歌いこなしてる。

東京事変 → 坂本冬美の話につなげて言うと、「フェイク」としての曲を「フェイク」として歌うのが椎名林檎東京事変)の魅力ではないかと。

あいみょん → 以前は王道に寄りすぎかと思った時期もありましたが、王道歩んでも全然行けそうですね。

YOSHIKI → 「Endless Rain」はいい曲なのですが、この曲聴くとどうしても「捕鯨☆柔和論」を思い出してしまって…→こちらを参照(注意! これ聴くと今後「Endless Rain」をきちんと聴くことができなくなる可能性があります。相当前に見たのですが、今回探したらまだニコ動にあった)

Superfly → 現在、排気量が最も大きな歌手は男性なら宮本浩次、そして女性ならSuperflyですかね。今回のMVPといっていいと思います。

Mr.Children → 本人たちは気に入っているのかもしれないけど「Documentary film」よりも「Brand new planet」のほうがいい曲なんだって。

星野源 → やはり「安倍首相は!?」ってなりますよね。でも、批評性のある歌詞で良かったと思います。

氷川きよし → 「限界突破する」と聞かされて、甘露寺蜜璃みたいな服になって、さらにもう1回衣装替えというのがわかったときは「限界突破ってパンイチ?それとも貝がら??」と不安も限界突破でしたが、ゴールデンな衣装で宙吊り。これは最高だった!

松任谷由実 → 3杯目、いや4杯目のティーバッグでいれたお茶という感じで、さすがに歌手としては厳しいものがあるので…?岡村、田中、出川と並んだ画は面白かったけど。

玉置浩二 → こちらは枯れず。日本でもトップクラスに歌が上手い人ですが、さすがのステージでした。

MISIA → 曲は正直どうでもいい感じなのですが、福山雅治とでは歌手としての排気量が違いすぎる感じ。

 

 というわけで、個々に振り返ってみてもやはり紅組ですかね。

 あと、北島三郎のリモート出演という謎演出ですが、第2部における実質的な演歌が石川さゆりのみということを考えると(三山ひろしは「けん玉」で氷川きよしは「限界突破」)、「演歌の死」の確認ということになるんですかね?