2019年の映画

 去年に引き続き映画館で見た映画は13本。立川シネマシティ以外で2本見たというのが去年に比べると進歩と言えるかもしれない。その程度の映画熱ですが、毎年恒例でもあるのでベスト5を紹介します。

 

1位 『運び屋』

 

 

 まあ、自分はイーストウッド大好き人間なのですが、イーストウッド作品の中でもかなり良かったと思います。

 実在した90歳の麻薬の運び屋をモデルにしたこの映画は、「家族愛」の話として美しくまとまっていると考えることも可能ですが、『ミスティック・リバー』や『チェンジリング』で、ある種の「家族の怖さ」を描いてみせたイーストウッドだということを考えると、この映画も、裏社会に入り込み家族から完全に離脱したことによって家族が「外」になり、だからこそ家族に評価されることを喜ぶようになった男の物語とも読めますし、「家族愛」を隠れ蓑にした享楽を描いた映画といえるかもしれません。

 

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2位 『ホテル・ムンバイ』

 

 

 題材は2008年のムンバイ同時多発テロ。チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅、二カ所の五つ星ホテル(オベロイ・トライデントとタージマハル・ホテル)、ユダヤ教の礼拝所などがイスラーム過激派に襲撃されたテロ事件で、この中のタージマハル・ホテルが映画の舞台となります。

 ストーリーとしてはテロリストがホテルを占拠し、主人公であるホテルのレストランで働く給仕や、客であるインド人のセレブな奥さんとアメリカ人の旦那とその赤ちゃんとベビーシッターらが、なんとかしてテロリストから隠れ、そして脱出しようとする話なのですが、とにかく緊迫感があります。携帯などの使い方もうまく、現代におけるスリラー映画の傑作と言えるでしょう。

 

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3位 『ROMA/ローマ』

 

 これは公開時期的には2018年の作品になるのでしょうが、今年の5月に見たので。

 ストーリーは1970年代のメキシコシティを舞台に、中流家庭の白人一家に雇われている家政婦を主人公として、その日常と家族のドラマが描かれています。

 最初は年代を明示するような描写はないですし、物語がどのように展開するかもよくわかりません。主人公の働く家のガレージに残された犬のうんちと、主人公の恋人がフルチンで行う武術(カンフー?)が印象に残って、「これは妙な笑いを見せる映画なのか?」とも思いましたけど、後半になると一気に物語が展開します。

 撮影もうまいですし、後半の物語の見せ方もうまく、監督のアルフォンソ・キュアロンの確かな腕を感じさせる映画でした。

 

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4位 『天気の子』

 

 エンタメのとしての完成度は『君の名は。』に劣ると思いますし、新海誠作品で「世界か君」かどちらを選ぶとすれば、「君」の一択であってストーリーの大筋は見えるているんですけど、あのラストは力強い。まさにポスト東日本大震災の想像力だと思います。

 新海作品は、それこそ『秒速5センチメートル』に見られるような「あり得たかもしれない過去への諦念」のようなものがあるんだけど、今作はそれをしまいこみつつ、最後まで駆け抜けます。

 ただし、それでもこの物語の背景には、より大きな日本人の自然への諦念みたいのがあって、その「諦念」を帆高が「覚悟」に読み替えていくラストが上手い。

 

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5位 『家族を想うとき』

 

 ケン・ローチフランチャイズの宅配ドライバーのリッキーとその家族を描いたドラマ。見る前は邦題がダサいと思いましたが、見終わってみるとこれでいいのかもしれません。見た後にずっしりとしたものを残す社会派ドラマとなっています。

  リッキーの妻のアビーはパートタイムの訪問の介護ヘルパーの仕事をしています。イギリスにおける労働者階級を描いた映画は数多くありますが、本作の特徴はやはり両親の職業ということになるのだと思います。以前は炭鉱や工場といった第2次産業で働いていた人々は、その職場を失い、サービス業へとそのはたらきの場を移さざるを得なくなっています。

 かつて労働組合が戦って勝ち取ったはずのものが消え去ってしまった社会の理不尽さ、そして不正義を告発する映画となっています。

 

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 次点は『グリーンブック』。ものすごく脚本がうまくできた映画だと思いますが、好きかと言われれば、「まあまあ好きかな」くらいなので。