歴史

 K・ポメランツ『大分岐』

「なぜ、西欧文明が世界を制覇したのか?」、これは歴史を学んだ者お多くが持つ疑問でしょう。 当然、多くの学者もこの疑問を考え続けており、御存知の通り、マックス・ヴェーバーはプロテスタンティズムという宗教にその要因の一つを見ましたし、D・C・ノー…

 保城広至『歴史から理論を創造する方法』

自分は大学の史学科(日本史学専攻)出身で、歴史好きで歴史を勉強したいと思って大学に入った者なのですが、大学での歴史の勉強は、いくつか面白い授業はあったものの全体的には物足りず、政治学とか社会学とか経済学とか哲学などに興味関心が移って今に至…

  D・C・ノース、R・P・トマス『西欧世界の勃興』

以前読んだ、『経済史の構造と変化』が面白かったD・C・ノースの代表作の一つ。最近、復刊されて買おうかと思いながらも高くて手が出なかった所、以前の版の中古が安い値段で出ていたので購入。 タイトルが『西洋世界の勃興』だったので、「なぜ他の世界より…

 坂本一登・五百旗頭薫編『日本政治史の新地平』

御厨貴門下(というと大げさなのかな?)の人々が集まってつくられた政治史の論文集。 以下の目次を見ればわかるように、取り扱う時代とテーマはかなり幅広いです。 政治史の復権をめざして――はじめに(坂本一登) 【第I部】立憲政の潮流 第1章 明治初年の立憲…

 呉座勇一『戦争の日本中世史』

源平合戦から応仁の乱まで、中世の二百年間ほど「死」が身近な時代はなかった――。手柄より死を恐れた武士たち、悪人ばかりではなかった「悪党」、武家より勇ましいお公家さん、戦時立法だった一揆契状……「下剋上」の歴史観ばかりにとらわれず、今一度、史料…

 坂野潤治『〈階級〉の日本近代史』

帯には「軍国主義台頭の最大の理由は、社会的不平等だった!」との文句。 『日本近代史』(ちくま新書)などで知られる坂野潤治が、「戦前の民主主義はなぜ崩壊してしまったのか?」という問題に迫った本です。 結論を先取りして言うと、戦前の政党が「平和…

 『独裁と民主政治の社会的起源』の描く日本近代

先日のバリントン・ムーアJr『独裁と民主政治の社会的起源』についてのエントリーで予告した、「第5章 アジアのファシズム―日本」の内容についての検討。 まあ、検討とは言っても、ほぼ目についた部分の引用のようなエントリーになると思います。 明治維新は…

 バリントン・ムーアJr『独裁と民主政治の社会的起源』

名著と名高い本を古本で購入して読了。 確かにこれは素晴らしい本で、いろいろなことを考えさせる本。 テーマとしては各国の近代化の過程を追いながら、その違いと帰結を論じるもので、「なぜ、ドイツや日本ではファシズムが生まれたのか?」、「なぜ、ロシ…

 麻田雅文『満蒙 日露中の「最前線」』

日本・ロシア・中国が勢力争いを続けた地、満蒙。その満蒙について、日露戦争後から第2次大戦集結までの状況をロシア側の視点から描いたのがこの本です。 目次は以下の通り。 第一章 『坂の上の雲』の先へ 小村寿太郎とウィッテ 第二章 日露協約時代の「満蒙…

 テツオ・ナジタ『原敬―政治技術の巨匠』

前に読んだ、黒澤良『内務省の政治史』に参考文献としてあがっていたことから知った本。1974年出版の古い本ながら非常に面白いですね。 1905年から1915年にかけて、原敬が政友会を躍進させた10年間を分析した本で、副題が「政治技術の巨匠」となっているよう…

 清水克行『喧嘩両成敗の誕生』

2006年に出版され評価も高い本ですが、やはり面白いですね。 タイトルが「喧嘩両成敗の誕生」となっているように、喧嘩両成敗の中身よりも、喧嘩両成敗という日本人は当然のように受け入れていながら実は他ではあまり見られないルールがどのような時代背景の…

 黒澤良『内務省の政治史』

「日本は明治以来の官僚国家」とか「明治以来の官僚内閣制」といった言葉をよく耳にします。 では、それほどまでに力を持った官僚はどの省にいたのか?まあ、出てくるのは大蔵省か内務省でしょう。特に戦前の内務省は国内の内政を一手に取り仕切り、警察も支…

 松沢裕作『町村合併から生まれた日本近代』

今まで日本では3回の大きな市町村合併がありました。新しい順に、ついこの前一段落した「平成の大合併」、1950年代の半ばから行われた「昭和の大合併」、そして本書で取り上げる1889(明治22)年の「市制町村制」という法律の施行にあわせた「明治の大合併…

 P・シーブライト『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?』

かなりインパクトのある日本語のタイトルですが(原題は『THE COMPANY OF STRANGERS』、「異邦人たちの付き合い」といった感じでしょうか?)、みすず書房の本で内容はしっかりっしています。そして訳者は山形浩生。みすず書房+山形浩生の組み合わせといえ…

 岸政彦『同化と他者化 戦後沖縄の本土就職者たち』

「同化と他者化」、普通の人にはまったく意味の分からないタイトルだと思いますが、副題にあるように戦後の沖縄の本土就職者について調べた本で非常に面白いです。タグに「歴史」をつけましたし、本屋の近現代史のコーナーに並んでいることも多いのですが、…

 ダグラス・C・ノース『経済史の構造と変化』

ノーベル経済学賞受賞者ダグラス・C・ノースが、人類1万年の経済史を「制度」、「所有権」、「取引コスト」、「フリーライダー」、「イデオロギー」といった概念を使って分析してみせた本。「制度」や「イデオロギー」という言葉が出てきたことからもわかる…

 アルフレッド・W・クロスビー『史上最悪のインフルエンザ』

スパニッシュ・インフルエンザに関して、本当は最も重要でありながら、実際には人々にはほとんど理解されずにいることがある。それは、たった1年かそれに満たないうちに何千万人もの人々の命を奪ったという事実である。どんな疫病だろうが戦争だろうが飢饉だ…

 若尾政希『「太平記読み」の時代』

政治の世界、あるいは一般の社会では、ある特定の思想やキーワードがいつの間にか流通するようになり、一種の「真理」や「正義」となって政治体制を支えるイデオロギーになることがあります。 近年だと、イデオロギーというほどではないですが、もともと左翼…

 速水融『歴史人口学の世界』

速水融(名前はあきらと読みます)の研究についてはいろいろな所で聞いていたのですが、実際に本を読んだのは初めて。 でも、これは面白い研究ですね。本書は岩波市民セミナーでの講義をまとめたもので、まさに歴史人口学の入門書といったものなのですが、そ…

 北岡伸一『官僚制としての日本陸軍』

政治学者にして一時期は日本の国連代表部次席大使も努めた北岡伸一による昭和期の日本陸軍についての本。最近の活動からすると「なぜ日本陸軍?」と思う人もいるかも知れませんが、もともとデビュー作は『日本陸軍と大陸政策――1906-1918年』で、ある意味でホ…

 與那覇潤『中国化する日本』

話題の本。面白いとは思います。そして著者の煽りを煽りをきちんと受け止めてスルーした上で第10章をきちんと読み込むことが出来るならば、世間で通用している日本史とは別の日本史の読み方を提示した本として有益な面もあるかもしれない。 が、同時に歴史学…

 中田整一『トレイシー』

サブタイトルは「日本兵捕虜秘密尋問書」。 「トレイシー」とは、第2次大戦中にアメリカがカリフォルニアに作った日本兵捕虜のための尋問施設で、壁に盗聴設備を埋め込むなどして、徹底的に捕虜から情報を得ようとしてつくられています。 そしてその結果得ら…

 河西秀哉『「象徴天皇」の戦後史』、そして退位論と読売新聞

退位論、「人間宣言」、昭和天皇とメディアの関わり、地方巡幸、皇太子の外遊と結婚などを通して、象徴天皇制の成り立ちについて論じた本。 なかなか面白い部分もありますが、「象徴天皇」というものをその法的性格から考えるのか、それとも現象から考えるの…