経済

 P・シーブライト『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?』

かなりインパクトのある日本語のタイトルですが(原題は『THE COMPANY OF STRANGERS』、「異邦人たちの付き合い」といった感じでしょうか?)、みすず書房の本で内容はしっかりっしています。そして訳者は山形浩生。みすず書房+山形浩生の組み合わせといえ…

 ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』

2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが、自らの研究の成果を一般読者にもわかりやすく説明した本。文句なしに面白いです。 今まで行動経済学の本を何冊か読んできましたが、ほぼすべての理論の元ネタがこの本で本家によって解説されてい…

 ダグラス・C・ノース『経済史の構造と変化』

ノーベル経済学賞受賞者ダグラス・C・ノースが、人類1万年の経済史を「制度」、「所有権」、「取引コスト」、「フリーライダー」、「イデオロギー」といった概念を使って分析してみせた本。「制度」や「イデオロギー」という言葉が出てきたことからもわかる…

 岡本信広『中国―奇跡的発展の「原則」』

このブログを読んでくださっているという著者の岡本氏に献本頂きました。ありがとうございます。 この本は改革開放以来の中国経済の発展のしくみを丁寧に分析した新書サイズの本で、ここ30年ほどの中国経済の歩みをたどることで、中国経済の成長をもたらした…

 イアン・エアーズ『ヤル気の科学』

著者イアン・エアーズ、訳者山形浩生は、非常に面白くも一方で怖い本でもあった『その数字が戦略を決める』と同じ。前作では「絶対計算」という大量のデータを用いた統計分析が専門家を打ち負かしつつあるということが豊富な事例を使って語られていましたが…

 アビジット・V・バナジー、エスター・デュフロ『貧乏人の経済学』

「みすず書房から山形浩生の訳書が出る!」っていうことだけでも期待してしまいましたが、期待に違わず面白い本。 貧乏人の一見不合理な行動に裏に見られる合理性や、理念は立派だけど期待はずれな政策の問題点、貧困を改善するためのちょっとした工夫など、…

 梶谷懐『現代中国の財政金融システム』

『「壁と卵」の現代中国論』が非常に面白かった梶谷懐による中国の財政金融システムを中央ー地方の関係を軸に分析した本。名古屋大学出版会から出版された専門書だけあって内容はかなり専門的ではあるのですが、逆に専門書という点からすると、この本で扱っ…

 梶谷懐『「壁と卵」の現代中国論』

タイトルの「壁と卵」は、御存知の通り村上春樹のエルサレム賞のスピーチで用いられた比喩、それに「現代中国論」というと、内田樹みたいな人物による中国に関するエッセイみたいなものを想像するかもしれません。 けれども著者の梶谷懐は現代中国論を専門に…

 タイラー・コーエン『大停滞』

ちゃんとした記事を書いたらはてなが勝手にログアウトしてて全部パー。 というわけで超ダイジェストで。 1970年代半ばからアメリカ(先進国)の成長率は鈍っている。 それは「無償の土地」、「イノベーション」、「未教育の賢い子どもたち」という「容易に収…

 ジョージ・A・アカロフ、レイチェル・E・クラントン『アイデンティティ経済学』

著者のアカロフと言うと、この本と同じく山形浩生によって訳された『アニマルスピリット』が非常に面白かったですが、そのアカロフが「アイデンティティ」という考えを経済学に取り込もうとしたのがこの本。 近年の経済学において、人間が必ずしも経済学が想…

 タイラー・コーエン『創造的破壊』

「創造的破壊」というタイトルからするとシュンペーターの「イノベーション」あたりの概念を解説した本にも思えるかもしれませんが、副題に「グローバル文化経済学とコンテンツ産業」とあるように、グローバル化と文化摩擦について取り扱った本。 著者は気鋭…

 ジェイン・ジェイコブズ『アメリカ大都市の死と生』

いろいろと忙しくて読むのに3ヶ月くらいかかってしまいましたが、面白かった! 都市論のバイブルとも言えるこの本は、解説で訳者の山形浩生が「本書のすごいところは、表層的な議論を付き抜けて、そもそも都市の本質とは何かというところまで掘り下げた批判…

 スティーヴン・レヴィット , スティーヴン・ダブナー『超ヤバい経済学』

レヴィットの天才的な鮮やかな切り口と軽妙な語り口、過激な意見が楽しめた『ヤバい経済学』(スティーヴン・レヴィット , スティーヴン・ダブナー『ヤバい経済学 - 西東京日記 IN はてな)の続編が登場。 続編ではレヴィットではなく他人の学説や実験が紹…

 高橋伸夫『虚妄の成果主義』

時間が余ったときにダラダラと読んだので、大雑把に読んだ印象だけを。 成果主義の問題点を指摘し、今までの「日本型年功制」の長所を再確認してみせた本。 「成果に対して「賃金で応える」のではなく、「次の仕事で応える」のが日本の企業のやり方であり、…

 竹森俊平『中央銀行は闘う』

身内に不幸があった関係で久々の更新。この本も読みやすい本であるにもかかわらず、読むのにけっこうな日数がかかってしましました。というわけでかっちりとした書評はできないですが、覚えている範囲で印象を。 竹森俊平の『資本主義は嫌いですか』はリーマ…

 ジョン・B・テイラー『テロマネーを封鎖せよ』

2001年から2005年までブッシュ政権の財務次官を務めたジョン・B・テイラーの回顧録。 テイラーと言えば中央銀行が利子率をいかに決定すべきかという「テイラールール」を考案した学者として名高いわけですが、この本を読めば実務家としても一流であることが…

 鈴木亘『だまされないための年金・医療・介護入門』

気鋭の経済学者による社会保障の入門書。 この前の『週刊ダイヤモンド』の年金特集も、基本的な考えはこの鈴木亘の考えが元になっているみたいですし、著者の鈴木亘は、今現在、社会保障の議論をする上で欠かせない人物と言っていいでしょう。その鈴木亘が年…

 ポール・コリアー『民主主義がアフリカ経済を殺す』

『最底辺の10億人』(http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20080820/p1参照)での過激な意見が話題を呼んだコリアーの、その続編と言うべきものがこの本。邦題はやや扇情的すぎる気もしますが、これまた議論を呼ぶことが必至な本。貧困国の現実を容赦なく暴き…

 飯田泰之・中里透『コンパクトマクロ経済学』

以前買って手元に置いている『 マンキュー経済学〈2〉マクロ編』には、IS-LM分析がきちんと載っていないため、それを勉強するために購入。 もともと経済学に出て来る数式が苦手で、数学からも遠ざかっている身としては、やはりIS-LMモデルや、労働市場のAD-A…

 ナシーム・ニコラス・タレブ『まぐれ』

昨年、『ブラック・スワン』がヒットしたタレブの一つ前の本。 『ブラック・スワン』が「金融危機を予言した!」とかいうふうに紹介されることも多いので、この本も相場についての本、あるいはもっと俗っぽく「投資の必勝法」みたいな印象があるかもしれませ…

 タイラー・コーエン『インセンティブ』

実は、経済学の核となる概念はカネではない。「インセンティブ」である。簡単に言えば、人間に行動を起こさせるものーーその活用術を、子供への家事手伝いのやらせ方、会議のやり過ごし方、歯科医のおだて方、マラケシュでのガイドの雇い方を例に、とことん…

 ジョージ・A・アカロフ/ロバート・シラー『アニマルスピリット』

『投機バブル 根拠なき熱狂』で経済危機を予言していたロバート・シラーと、経済における情報の非対称性の研究でノーベル経済学賞を受賞したアカロフの共著にして、これからの経済学のありかかを指し示す本。そして付け加えるなら読み物としてもかなり面白い…

 ハロルド・ウィンター『人でなしの経済理論』

トレードオフについて扱った本で、翻訳は山形浩生。 と書くと、わかる人には本書の内容が想像つくかもしれません。トレードオフという経済学の道具を使って世の中の常識的な考えに異議を唱える本と。 内容的には基本的にその通り。人命の価値や臓器売買、そ…

 ブライアン・カプラン『選挙の経済学』

私の分析から示唆される穏健な改革は、投票率を上げるための取り組みを減らすか、あるいは止めることである。(378p) 上記の引用文からもわかるように、民主主義に経済学の面から痛烈な懐疑を突きつけた本。 民主主義において「なぜ間違った政策が選ばれるか…

 「一度でいいから好景気の時代に生きてみたい」

今月の中央公論の見田宗介と三浦展の対談で見田宗介が学生の発言として紹介している言葉。 見田宗介は「いじらしい」みたいに言っていたけど、35歳より下くらいの人にとっては切実ですよね。 今の日本は日銀が「好景気は許さない!」っていうスタンスをとっ…

 迷走する高校地理のガイド本?パンカジ・ゲマワット『コークの味は国ごとは違うべきか』

著者はハーバード・ビジネススクールで史上最年少で教授になった人物で、この本も当然ながら経営学の本なのですが、個人的には「地理」の本として面白く読めました。 ここで言う「地理」とは、学校にある地理の教科のこと。現在、中学・高校の地理の教科は迷…

 モハメド・エラリアン『市場の変相』読了

現在の経済危機を予測した本として、英フィナンシャルタイムズの「2008年ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのがこの本。 さらに日本では池田信夫は原著を去年のベストにあげています。 http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/m/200812/1 (池田信夫…

 今年度の毒舌大賞

投資顧問会社タンタロン・リサーチ・ジャパンのイェスパー・コールCEO(最高経営責任者)は、改革派の小泉純一郎元首相を引き合いに出し、中川氏の酩酊会見は「小泉政権以来最も有効な政策だ。日本銀行で3年間審議しても、これ以上に効果的な刺激策は出ない…

 自民党細田幹事長が打ち出した最高の景気対策案!

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090202/stt0902021854003-n1.htm 自民党の細田博之幹事長は2日の記者会見で、日本銀行券とは別に政府が発行する政府紙幣について「そういうことができるなら、毎年30兆円ずつ紙幣を刷って、800兆円の借金…

 高層マンションが犯罪を招き、ゲイが街を救う(ティム・ハーフォード『人は意外に合理的』)

ティム・ハーフォード『人は意外に合理的』を読了。 http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20061201で紹介した同じ著者の『まっとうな経済学』は、タイトル通り社会の様々な経済現象を経済学の正統的なツールで分析した好著で、経済学の入門としてうってつけの…